ガルダ湖畔で大ブレーク中の白ワイン、ルガーナDOCの生産者、テヌータ・ロヴェーリア社

 

ヴェローナの近郊にある人気のリゾート地、ガルダ湖の湖畔に位置するのが白ワインのルガーナDOCの産地。このルガーナは、その個性あふれる魅力から近年イタリアを始め世界中で俄かなブームを呼んでいます。BIANCOROSSOでは、この産地のリーダー的な生産者、テヌータ・ロヴェーリアのルガーナDOCを直輸入。

9月30日、ワインジャーナリスト、宮嶋勲氏テヌータ・ロヴェーリア社の醸造長、パオロ・ファッビアーニ氏と共に行ったオンラインセミナーでの内容を中心に、テヌータ・ロヴェーリア社のルガーナDOCワインの魅力をご紹介します。

イタリア北部には沢山の湖があり湖水地方と言われますが、その中でもヴェローナ近郊にあるイタリアで最も大きい湖がガルダ湖です。これらは全て氷河時代に形成された氷河湖です。特徴としては南北に細長いということがあります。この湖畔は、古くから伝統と由緒ある高級リゾート地として知られます。

このガルダ湖畔の南にあるのが白ワインルガーナの産地です。ガルダ湖の東側にはクストーザDOC、バルトリーノDOCがあり、氷河が形成した多様な土壌に合ったワインがそれぞれの地域で生産されます。

大きな湖が温暖な気候を作るため、トスカーナに見受けられる糸杉なども生息しています。しかし温暖ですが、湖の北側にはアルプスが聳え、北からの非常に冷たい風は防ぐものの、程よい冷気も流れてきます。この気候がブドウを成熟させ、引き締めます。

この優位な気候で酸とミネラル分が非常に強いトゥルビアーナ種を栽培することによって生まれるのがルガーナDOCです。

宮嶋氏:ルガーナDOCはヴェネト州とロンバルディア州に跨っています。ロンバルディア州側がほとんどの面積を占めるにも関わらず、生産量は圧倒的にヴェネト州側がカバーしますが、その裏にはヴェネト州の大手生産者の存在があります。しかし赤ワインはヴァルポリチェッラ、白ワインは圧倒的にソアヴェが一世風靡していた流れの中で、クストーザやルガーナは二軍扱いされてきました。その一方で、ルガーナはヴァカンスにやってくるドイツ人に常に大人気。帰りには一年分のルガーナを買って帰るほどでした。こうして地元の観光客とドイツ人がほとんどのルガーナを消費してきたという背景もあります。こうして長い間、輸出もされず名も知られない時代が続いていました。

ワインの産地は一般的に、山の傾斜面が良いと言われます。しかし、このルガーナは例外。2億年前に形成された氷河時代に湖から流れ出して造られた平地に広がる表堆積土壌のお陰です。

宮嶋氏:フランチャコルタも同じくイゼオ湖の前に表堆積土壌ですが、ガルダ湖自体が非常に大きい為、堆積される土壌の面積規模が全く違います。よって湖に近い北側では石灰粘土率が非常に多く、南に行くと、丸い石ころを含む表堆積丘陵地帯となり、フランチャコルタとも似通った特徴が出てきます。この二つの土壌の特長の違いによってルガーナのキャラクターも北と南で大きく異なってきます。

そして特に、湖側の粘土質で造られるルガーナが、ミネラル=塩っぽさと高い酸、スモーキーなニュアンスも持つ、最もルガーナらしいワインができるエリアと言われます。一方南では熟れた果実のニュアンス、トロピカルでミネラルは強くなく、心地よいチャーミングで親しみやすいルガーナが造られます。

下の地図の、薄緑のエリアがこのルガーナの特長がしっかりと出やすいエリア。ご覧いただく通り、テヌータ・ロヴェーリアの畑はこの粘土質の部分を中心に畑を所有しています。

 

 そして更に、テヌータ・ロヴェーリアの重要なこだわりとして、このルガーナらしい特長的な土壌の特質を最大限に生かすため、このルガーナらしさが出ると考えらえる石灰質分が高まる地下120cmにブドウの根が達する樹齢20年以上のブドウのみを使用しています。醸造長のパオロは、よりルガーナらしいワインを造るに、それは必須だと考えます。

バローロエリアの土壌は1200万年前と言われますが、二億年前に形成されたというのがいかに古いか

 ルガーナDOCで使用するブドウは、トゥルビアーナ種。長期熟成に向き、ヴェルディッキオやトレビアーノ・ディ・ソアヴェに非常に近いとも言われますが、クローンが微妙に違います。

宮嶋氏:ヴェルディッキオに見られる青い草を刈ったようなニュアンスがトゥルビアーナ種にも感じられます。両方ミネラルと酸が高いです。グレーなニュアンスもあり、爽やかですが力強く男性的なキャラクターも持ち合わせます。
よってお肉料理にも合わせられる品種です。

特長的には高い酸と、塩味を持つと言われます。また皮がしっかりとしている為、テヌータ・ロヴェーリアのように遅摘みをすることも可能です。

そして、こちらがいよいよテヌータ・ロヴェーリア社。

テヌータ・ロヴェーリア社-Tenuta Roveglia

ロンバルディア州・ポッツォレンゴ

畑:1404年 創業:1988年~4代目
広さ:110ヘクタール
ワイン:10種類のワイン+3種類の蒸留酒

このエリアで最も古いと言われるワインセラーを持ち、且つ最新醸造施設も備えます。

スイス系ファミリー、フェデリコ・ズウェイフェルが創業、現在4代目の3姉妹が引き継ぎます。


宮嶋氏:3代目のジョヴァンニ・フェリーチェ・アッツォーネ氏はパドヴァ大学の医学部の教授でもあります。当時80年代、まだまだ農夫的なエリアであったルガーナですが、彼が伝統的なルガーナへの近代的な革新をしたということが大きいです。またその設立当初から成就されるのが醸造長のパオロ・ファッビアーニ氏ということで、安定感抜群のワイナリーと言えます。

ここで3種類のルガーナDOCのテイスティングコメントをイタリアの2020年と2021年ミシュラン一つ星レストランの、Il Chicco di Grano di Castelmella Bresciaのソムリエの二コラ・ボネーラ氏(2010年にイタリアの最優秀ソムリエに選出)と、宮嶋さんより頂きます。

一番左から:

リムネ ルガーナ- Limne Lugana DOC

二コラ氏:ルガーナ湖で取れるホワイト・フィッシュのパン粉焼き。

シンプルでクラシック、すぐに飲めて若さもありつつ時間と共に熟成も可能なワインです。

パオロ氏:熟した果実感、黄桃、オレンジやレモンの柑橘類、はルガーナの典型的な香りです。熟した果実のトーンにフレッシュな柑橘系に花も混ざる。2年しか熟成していませんが、リースリングに見られるような僅かなぺトロール香が出始めています。ボディー、骨格もあり、飲み終わった頃には唾が出てきて何かを食べたくなるような高いミネラル感。しかし呑み終わると口の中はスッキリとします。これらのルガーナのワインの特長と言える要素が全てリムネの中には詰まっています。少し脂っぽい味わいのガルダ湖の魚料理などと合わすのは最適です。

 

宮嶋氏:ルガーナはどんなワインですか?と聞かれたときにリムネを飲めば分かると言いたいほど、ルガーナの特長を付いています。食事を呼ぶワイン。食欲をそそるワインです。爽快感と同時に熟した果実も連想させ、高いミネラル分、塩味を感じます。生ハムなどが食べたくなりますね。何杯でも飲みたくなります。こはだ、鯖、などの御酢で〆たお鮨など、フルーティーな白ワインを合わすと生臭さが残ることがありますが、リムネと合わせるとスッキリと楽しめるのではないでしょうか。

二コラ氏:ガルダ湖特有の気候条件により生まれるまるみや熟成感が、ナスやこの料理の中の強い味わいの要素と調和します。3つのワインの中でもリムネが持つフレッシュ感、塩味はガルダ湖の魚料理にはぴったりです。

 

カトゥッロ・ルガーナ・リゼルヴァDOC2017 

名前の由来:ガルダ湖にあるシルミオーネの先にローマ時代のカトゥッロ(カトゥルス)という詩人が所有していたと言われる別荘の遺跡があり、それが由来しています。

樹齢55年のトゥルビアーナ種を使います。収穫は10月半ば~10月末のブドウがしっかりと熟れたものを使用します。樹齢が古い為、皮が厚く病害にやられにくいためにしっかりと熟成することが可能となります。より深く根が張るため、より石灰質の強い石灰岩の特長がワインにミネラル感として現れます。ステンレスタンクだけで熟成させますが、2年間澱と共にシュールリーさせることでワインが滑らかになります。残糖度は低いですが13%と高めのアルコールな故、甘い印象があります。

二コラ氏:アロマティックハーブが最初に感じられます。リムネより更に熟した果実感、アプリコット、爽やかな柑橘類、プラム、蜂蜜、はっかく、僅かにカカオのニュアンスもあります。熟成香であるぺトロール香もより高くなります。リムネよりもさらに重み、口の中を包み込むような丸い酸が感じられ、よりまろやかでクリーミーな印象です。合わせる料理は魚だけでなく鶏やウサギような白身のお肉、ハーブをしっかりと利かせたお料理、魚のグリル、キノコの手打ちパスタなどがおススメです。

宮嶋氏:ヒラメのクリーム煮、アドレア海側で食べられるような魚介のスープ、クリームシチュー、焼き鳥の塩焼きなど。丸みがありますが酸がしっかりとあるのでフード・フレンドリーであらゆるお料理と合わせられます。

二コラ氏:ポルチーニのパスタ

ワイナリーの中で長く熟成された収穫から3年後にリリースされるこのワインは非常に古い樹齢のブドウから造られます。複雑な味わい、ミネラル感、ハーブのアロマティックな香り、果実感、蜂蜜、育った土のニュアンスが非常に感じられるこのワインには、同じく土から生まれるポルチーニ茸を使ったタリオリーニを合わせます。

このアッビナメントにより林の中のエッセンスを最大限にすることができると言えるかもしれません、カカオや八角(スターアニス)を使ったこの料理には非常にリッチなリゼルヴァがピッタリです。

フィロ・ディ・アリアンナ ヴェンデミア・タルディーヴァ ルガーナDOC2017

樹齢55-60年の古木を使う非常に特徴的な遅摘み収穫ワイン。気温が0℃を下回る、11月に遅摘みをすることでブドウ内に貴腐ワインに似通った状態が生れ、他のルガーナとはまた違った香しさが表れます。4000kg/haと非常に少ない収穫量。ステンレスで醸造後3000㍑の樽で熟成します。

名前の由来:ギリシャ神話のアリアンナの糸から来ています。テセロがミノタウルスを倒しに行く際、複雑な迷路のような道を探すために糸を垂らしておくというストーリー。このワインは11月のイタリアは天候が崩れる年もあり、リスクを伴いながら作るため、様々な困難を乗り越えて初めて作ることが可能となるこのワインの名称として使われています。

パオロ氏:エキゾチック、蜂蜜、トロピカルフルーツ、果実のコンフィなどが感じられます。ヴェンデミア・タルディーヴァを名乗るためには12g以上の残糖度が必要となり、この場合も14gありますが、口に入れると最初に甘い味わいがあるものの、その後ルガーナらではの酸とミネラルにより爽やかな印象となります。合わせるのが難しいアーティチョークのグリルとも合わせられます。また甲殻類の煮込み料理などとも良く合います。

二コラ氏:長期熟成チーズ~フォルマッジョ・バゴス

ブレーシャの山間のサビア谷で牛乳で造られる長期熟成のティピカルで高いりを持つチーズです。このチーズには間違いなく偉大なワインを合わせる必要があます。強く、複雑実があり、長い余韻があり、沢山の豊かなで癖の強い味わいのチーズです。このチーズにフィロ・ディ・アリアンナ・ヴェンデミア・タルディーヴァ、タイプとして遅摘みで、木樽で長期熟成をさせることで、リッチで芳醇な味わいを持つワインであり、香りはエキゾティックで熟れた果実、ジャム、長期熟成の能力を持ち、この偉大なチーズと共にすると口の中で芳醇な味わいと調和を生み出します。

 宮嶋氏:ドイツのアルザス、フォアグラ、魚を煮込んだもの、タレッジョなどの熟成チーズなどが合うかと思います。

 

パオロ氏:ルガーナは早飲みでももちろん楽しめますが、熟成ワインが好きなかたへは5年~10年熟成することをお勧めします。高い酸とミネラルがあるお陰で熟成しても常に生き生きとフレッシュな状態で楽しむことができます。先日1988年を試飲しましたが、非常に美味しい状態でした。

近年の温暖化の影響はありますか?

パオロ氏:ルガーナの産地の特長である粘土質は、冷たい土壌を保ちます。寄って、砂質などの畑と比較すると比較的温暖化の影響は受けにくいです。

 2021年ヴィンテージはいかに?!

パオロ氏:今年は非常に良い気候に恵まれました。収穫の直前に昼と夜の寒暖差がはっきりとあるのが理想的で、今年は正にそんな状態です。今既にスパークリング用の収穫を終え、9月30日の本日からリムネのブドウを収穫していきます。 まだ収穫の最中ですが、非常に良いとしになりそうです!

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